【完】冷徹仮面王子と姫。
「恭一君ってさ…及川さんの時も、一人で帰ってたよね?気にしなくっていいよね?」


「あぁ…うん、多分」



 この程度のことなら、あたしに聞かなくても他の子に確認くらい取れるんじゃない?


 確実なのはあたしとあーちゃんくらいかも知れないし、今のあーちゃんは正直この事を聞くには怖いけれど。


 でも、あたしにはこの台詞が、怖すぎた。


 先に帰ってるとしても、私の事は好きだよね?…なんて。そんな幻聴が聞こえてきそう。


 僻みや妬みが、あたしに囁く。


 黒い感情が膨らんでいくのを、理性で必死に抑える。


 マイナス思考にも、程がある。



 どこかで信じていたい、一緒にいた時の氷室君。


 あの笑顔を見たのはきっと、過去は分からなくても、少なくともあの教室の中ではあたしだけだと。



 ……あーちゃんの言葉を、支えに。



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