さよなら、天使
2.天使の存在
彼の名前は遠藤 春。

けっこう無口でクールな人らしい。

あの後、彼の事が気になった私は直子から色々聞き出していた。

直子は写真を見たあの日の事をすでに忘れているようだった。

私は誰にも言えずモヤモヤした日々を過ごしていた。
入学式を間近に控えたある日、直子がうちに遊びに来た。

「おじゃましまーす!!」

「まぁ、直子ちゃん!久しぶりねぇ。なんか大人っぽくなっちゃって(笑)」
お母さんは、直子の肩をポンポン叩きながら言った。
「もーおばさんったらー、冗談うまいですねぇ(笑)」
直子は完全に調子に乗っている。

「はぁ。もうお母さんあっち行っててよー。」
私は呆れた顔をでお母さんを見た。

「別にいいじゃん!あっおばさん、私の好きな人の写真見ますぅ?」

「え。。あ、あー優美が前に言ってた人?」

「この人ですよ!」
そう言うと直子は彼を指さした。

お母さんは、彼をじっと見ていた。

「かっこいいじゃん!!」
そう言ってニッコリ笑ってみせた。

なんだ。お母さんにも見えないのか。。

「春くんって言うんです。遠藤春くん。春くんも同じ高校なんですよー。」

「え、えんどう?」

お母さんが一瞬、怖い顔になった。

「どうしたんですか?」
その表情に気付いた直子が尋ねた。

「ごめん。用事思い出しちゃった(笑)じゃ、直子ちゃんゆっくりしてってね!」

そう言うと、奥の部屋に消えていった。

「ごめんね。勝手な人で。」
私は直子に謝った。

「全然いーよ(笑)おばさんおもしろいね(笑)」

その後、たわいもない話で盛り上がり、気付けばもう外は暗くなっていた。

「じゃ私、もう帰るね。おばちゃんによろしく!」

そう言うと直子は帰っていった。

そういえば、あれからお母さんの姿を見てないなぁ。
奥の部屋で電話する声がしている。

「すごい長電話だなぁ。」

話し声はしないけど、ヒソヒソ深刻な話をしているみたいだ。

それから何分後に、お母さんが出てきて何食わぬ顔で料理を始めた。

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