喧嘩機甲クォーラル
 彼らの様子をちょうど四百メートル程向かいの赤煉瓦作りのアパートから見つめる二つの影。


「どう?」

「……引ったくりをやっつけました。とても彼が適合者とは――」


 二人は女性。双眼鏡を片手に窓際に腰掛ける彼女はフィニと言い、優雅なたたずまいで腕を組み彼女の言葉を遮るのがアレックス。

 二人はとある宇宙海賊で、連邦政府最大の厄介者だ。


「でもね、あの子が選んだんだもの。間違いはないわ。今までだってそうだったでしょう? ケインリッヒ、ツヴァイ、アイゼンハウアーに――」

「あー、はいそうですね」


 アレックスが乗員を指折り数えるのを制し、頭を抱える。

 今、名前の挙がった彼らはまともではないうちの乗組員の中でも最大級の変人奇人。その上、船が動くには彼らが必須。

フィニが頭を抱えるのも無理はない。この上司もそうだ。何を考えているか、分かったものではない。


「じゃ、後よろしく。色気使ってでも連れて来てねー」

「色気……、了解です」


 ひらひらと手を振り部屋を出ていく上司の聞き慣れた嫌味を反復し、苛立ちを現に顔にだけ出す。


(年増が……)
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