【完】最期の嘘
恋愛から遠ざかろうと思った。



人を想うのを止めてしまおうと思った。



けれど、思い出さないようにしていても心のどこかに燻る想い。



大切にしてくれた礼治より、たった一度の関係の優太への、消えることのない想い。



そんな自分が嫌い。礼治を傷付けたくせに優太を諦め切れない自分が嫌い。



上書き保存をした空白の上に、小さな炎が燈って、またその上に空白を保存。



汐は、心の中でそんな不毛なことを繰り返していた。
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