【完】最期の嘘
今年の冬は、都会に雨が降り注ぐような冬。



今日もそんな日で…



気が付けば、真っ暗な外には雨が降っていた。



しかし、汐はいてもたってもいられず、雨の外に出ていた。



もし、あれが優太の気持ちだったのだとしたら…



もし、自分が『優しい嘘』に気付けていたとしたら…



「何か…変わったのかな?……ねえ、優太さん。もう、遅すぎるよね。」



汐の呟きは虚しく地面にぶつかる雨音に吸い込まれる。



汐は、下宿の目の前の空き地にあるベンチに、力無くすとんと座り込んだ。



………そんな汐を、見つけてしまった者がいたとも知らずに。
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