ずっと大好き…この恋は秘密 …


抱きしめられた腕の中で
浅井の心臓の音が落ち着いていくのを聞いていた。



色々な言葉が頭に浮かぶ。


でも何を言えばいいのかわからずにみのりは黙ったまま浅井の体を抱きしめた。



「…あいつ行っちゃったけど?」


浅井の声が体中に響く。


「…うん」


「いいの?

…あいつなら普通に付き合えるし、
オレみたいに佐倉を泣かせないよ」


浅井の胸から振動しながら聞こえる声に

みのりは目を閉じていた。


閉じた瞳からも涙がこぼれ落ちる。



うれし涙なのか…何なのか、

わからなかった。


ただただ涙が流れた。



「結婚してないし、歳だって近いだろ」




浅井の声が…


みのりの大好きな声が

これ以上ないくらい近くから聞こえる。




ずっと聞きたかった声…




「行かなくていいの?」



意地悪な事ばかりを言う浅井に


みのりがやっと口を開く。



「…じゃあなんで離さないの?」


みのりを強く抱きしめたままの浅井を…

抱きしめ返しながらみのりが言う。



「……」



みのりを抱きしめる浅井の腕の力が強くなる。



「浅井さん…?」


「…離したらあいつのとこ行くだろ?」


浅井の言葉にみのりが首を振った。



「…わかってるんだ。

佐倉はあいつと付き合った方がいいって…

その方が幸せだって…」


みのりが浅井の腕の中で何度も首を振る。



「でも…

ごめん。



離してやれない」



浅井が深く吐いた息が
みのりの肩にあたる。






少しの沈黙の後に…


浅井が口を開いた。

















「佐倉が好きなんだ」


















浅井の肩越しにきれいな星空を見つめたまま…

みのりの時間が止まった。








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