ずっと大好き…この恋は秘密 …

浜辺の相合傘



「着いたよ」


浅井が海が正面にくるように車を止めた。


「…結構荒れてる」


天気がいいわりに波が大きく浜辺に打ち寄せていた。


「せっかくだし近くまで行くか」


なんだか子供みたいにあどけない笑顔を向けてくる浅井に

みのりも笑って頷く。


「ブーツ平気?

歩きにくいだろ」


そう言いながら浅井が差し出した手をみのりが握った。


「なんか恋人同士みたい(笑)」


みのりがぽつりと言った言葉が波の音にかき消される。


「なんか言った?」


振り向いた浅井にみのりが首を振った。


1月の海には予想通り誰もいなくて…

波の音だけが大きく響き渡る。


「独り占め…」


海を見ながらみのりが言うと

浅井が笑顔でみのりの顔を覗き込んだ。


「オレを?(笑)」


「海をっ!」


みのりの大きな声に浅井が笑う。


「まぁ、もうとっくにオレはみのりのもんだしな(笑)」



―――…





『遼太はあたしのもの』


蘇るのは…

沙紀の言葉。



「…ばか」


浅井のうれしい言葉にも素直に喜べなくて…


浅井に聞こえないようにつぶやいた。


みのりの小さな声が波の音に消えていく…




あたしの…ばか。


気を取り直すように足元にあった木の枝を拾い上げ

浜辺に絵を書き始めた。



「これなんだかわかる?」


最近流行りのキャラクターを書いて…

浅井を見上げた。


「…わかんねぇ」


しばらく考え込んだ浅井が答えると

みのりがバカにしたように笑う。


「…またしてもジェネレーションギャ…痛っ!」


言い終わる前に
浅井がみのりの頭を軽く小突いた。




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