ずっと大好き…この恋は秘密 …


「つぅか絵が下手なんだよ。

それにそうゆうのは男は知らないのが普通」


腕を組み直しながら言う浅井にみのりが笑う。


「はいはい(笑)」


「つぅか寒いなぁ…

自販機で温かいやつ買ってくるから待ってて」


浅井の言葉にみのりが座ったまま頷く。


浅井の足音が…

砂を踏む音がどんどん小さくなる。



砂浜に色々落書きをしていたみのりの手が何気なく止まる。





『もうとっくにみのりのもんだしな』


…ほんとに?



すごくすごくうれしいのに…

胸が苦しくなるのは何でだろう…



『浅井遼太』


浜辺に浅井の名前を書いた。


その隣に

『佐倉みのり』


相合い傘を書いてみてから恥ずかしくなった。





…こんなの絶対見せられないし(笑)



そういえば夏休み何度もノートの隅っこに書いたっけ…


あの時はまだ名前も知らなかったから『浅井遼』って…

『遼』に続く文字がなんなのか…

想像して…



『浅井…』





『浅井…


…沙紀』






…なんで頭から離れてくれないの?


今浅井さんはあたしの隣にいるのに…



こんな時まで出てこないでよ…


何度も打ち寄せる波の音がすごく小さく聞こえる。


頭の中に沙紀の言葉ばかりが大きく響く。






浅井さん…

苦しいよ。



片思いしていた時よりずっと苦しい…



あたしは沙紀さんにみたいに…

あんな風には笑えない。


浅井さんを自分のものだって
当たり前のように言えない。



あたしはどうしたらいいの…?



あたしが…


間違ってるの…?



だから

沙紀さんに何も言えなかったの…?




波打ち際に書いた2人の名前が


いつの間にか波で消されていた。






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