ずっと大好き…この恋は秘密 …

「よぅ。

久しぶりだな」


笑顔を向ける浅井にみのりが口をパクパクさせる。


浅井の背中側では生徒達が何事かと窓から浅井の様子を見ていた。


時たま吹く風がみのりの髪をすくう。




「浅…井さん、

まずいって…」


小声でバスに聞こえないようにみのりが言うと

浅井が爽やかに笑って答える。


「なんで?


普通に話してるだけじゃん(笑)

佐倉、悪いんだけど1人遅れてきてないやついるから教室まで案内してくれる?」


「はい?」


みのりが間の抜けた声を出すと
浅井の視線が横にいた里奈に向けられた。


「……」


「田崎ですよっ(笑)」


沈黙に何かを読み取った里奈が苦笑いしながら言うと

浅井が安心したように笑った。


「じゃあ田崎(笑)

バスのやつらにそう伝えておいて」


浅井の言葉に
里奈がみのりを見てピースサインをした。


『ごゆっくり〜』


クチパクでそう言いながら
里奈がバスに向かう。


「あ、えっと…こっちです」


みのりの横を浅井が歩く。



いつもは繋がる手が

今日は微妙に離れていて…


とても不思議な感じだった。




…しかも学校だし。


こんな場面にもドキドキしてしまう胸を押さえながらみのりが浅井を見上げた。


「何組…ですか?」


他人を装うための久しぶりの敬語がよけい緊張を誘う。





浅井さんの『佐倉』久しぶりに聞いちゃった…





隣を歩く浅井の茶色の髪が風に緩く揺れていて…

夕日に透けていた。



浅井がちらっと後ろを振り向く。


みのりもその視線を追った。


少し離れた場所にある校門前の送迎バスがやけに目立っていた。



「ん〜…

ここまでくれば大丈夫だな。


あれ嘘(笑)」


ニヤリと笑う浅井に状況が飲み込めずに

みのりはただ浅井の顔を見つめていた。



微妙に吹く風がまた2人の髪を揺らした。





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