王国ファンタジア【宝玉の民】
両親によって匿われ、隠れていた少年ドルメック。
小さく踞ってただ耳を塞いで震えていた。
怖くて、どの位の時間がたったのかも分からなくて、泣きながらいつの間にか寝てしまっていた。
気が付くと、なんの音もしなくなっていた。
恐る恐る、震える足を引き摺りながら外へと這い出した。
10歳にも満たない少年にとって、それは余りにも衝撃的な光景だった。
頭の中が真っ白になった。
友の名を、父親を、母親を叫び、泣き崩れた。
息が苦しくても、喉が裂け、声が枯れても…。
仲間の名を叫び続けた。
それから数時間…。
ドルメックは涙も枯れ、声も尽き、ただ茫然と仲間達の亡骸を眺めていた。
「……お墓…つくらなきゃ……」
掠れた声で呟く。
だいぶ昔に、仲間が亡くなった時、父親が言っていたことを思い出していた。
どうして、亡くなった者を埋めてお墓を作るのかと聞いた時に、父親はドルメックにこう語った。
『お墓は、亡くなった人の為の新しいお家なんだよ。誰にも邪魔されずにゆっくり休む為のね…』
そう言って、少し寂しそうに笑っていた。
こんな、外に投げたされたままでは、皆ゆっくりなんて休めない。
「……はやく、楽にして…あげなくちゃ…」
まだ小さな少年が、大人を埋めれるだけの大きな穴を掘るのは、容易なことではない。
一つ作るだけでも大変だろうに、仲間全員分―68もの墓を数日掛けて、作り上げた。
墓石に、全員の名を刻み、手を合わせ、思い出に涙した。
涙と汗と泥にまみれて、全てをやり終えたドルメックは、仲間の墓を振り返った。
身体の一部を奪われた仲間を思い出し、ドルメックは心に誓ったのだ。
―必ず仲間の核石を取り戻し、この墓石に添えると―