365回の軌跡

代わり

季節は冬になった。寒さが強くなり、ウメばあさんの庭の桜の木も、すっかり葉を落とした。
今年の冬の到来は早く、寒さが11月には厳しくなってきた。
白い吐息を吐きながら自転車で帰宅する。時間は夜7時。これから着替えて優雨と会う予定だ。
優雨とは夏に海に行ったあとも何度も会っているが、特に何もなかった。キスをしたのがあれが最初で最後になるが、結局キスの意味は分からなかった。
「沙紀~!こっちこっち!」
優雨は待ち合わせ場所に既に来ていた。仕事帰りなのか、スーツ姿だった。
「お待たせ~。今日は優雨の昔からの行き着けの場所に連れて行ってくれるんでしょ?」
「ああ、さ、行こう!」
優雨と並んで歩く。私の優雨を愛しく思う気持ちだけが強くなって、これ以上の行き着く場所が自分でも分からない。優雨は私をどういう感情で並んで歩いているのだろう。私は半年間聞けない気持ちを今日も胸の奥にしまったままだろうな…と思った。
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