365回の軌跡
「で、結局その彼とは連絡取ってないの?」
麻耶が私に聞いてくる。
「うん。私どうしたらいいか分からない」
私はティッシュで涙を拭いた。
麻耶と遥に優雨のことを話すつもりは無かった。私の心の中だけに留めておくつもりだった。
「彼はその昔の彼女を沙紀に重ねて今まで遊んでたって思ったわけね」
麻耶は腕組みをして考える。
「彼から今も連絡来るの?」
今度は遥が私に聞く。
「…うん。2日に一回くらい。ちゃんと話がしたいって」
私は二人に話を聞いてもらっている内に泣いてしまった。麻耶も遥もそんな私の様子を察して真剣に話を聞いてくれた。その優しさがとても嬉しい。
「もう一度だけ話してみたら?」
遥が私にハッキリと言った。
「…そうかな?」
「沙紀、その人のことまだ好きなんでしょ? じゃあもう一回二人で話しなよ。そのアミさんて人が嘘を言った可能性だってあるんだし」
「私もそう思った。もう一回、二人で話しな!」
麻耶も遥に同意した。
「でも…ホントに私じゃなくてその人と重ねて彼が今まで私と付き合ってたとしたら…苦しいよ…」
私は涙ながらに言う。
「私…彼無しじゃ生きていけるか不安なくらい、彼が好き。彼と会ったり遊んだりできるなら友達でもいい。でも別の誰かと私を重ねて見てるのは…辛い。会いたくない…」
「沙紀!」
麻耶がいきなり怒鳴る。私はビックリして濡れた目で麻耶を見た。
「好きなんでしょ?メソメソしてたって何も変わらないじゃない!沙紀はそんな弱い女じゃないはずだよ!」
「沙紀、沙紀は元気で笑ってるのが沙紀じゃない!頑張って!」
「…ありがとう」
私は鼻水を啜る。
「また何か小さいことでもあったら話して。私達三人はいつまでも親友なんだから!」
麻耶はそう言うと缶酎ハイを新しく三本出して、それぞれに手渡した。
「沙紀の健闘を祈って~、乾杯!」
麻耶が大きな声で音頭をとる。私達は遅くまで語り明かした。
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