ロ包 ロ孝
「なぁに? 淳ったら、また妬いてたのぉ? ホントにあたしの事好きねぇっ!」

「もう大丈夫です。皆さん怖かったでしょう、そしてお疲れさまでした。すぐ警察が来ますのでご安心下さい」

 里美の言葉は聞こえない振りをして、人質達にそう伝えた。これで一件落着だ。

「ああ、いやぁ、凄いモンですね。聞きしに勝るというか想像以上というか、とてもこれが大昔の術だなんて、露ほども考えられません。僕も音力内では何度か見学させて貰いましたが、ここまで鮮やかなお手並みは見た事がないので、新鮮というか衝撃的というか……。しかしこうまで見事ですと、なんといいますか、こう……」

「ちょっとちょっと北田さん! ちょっと!」

 短い、毛むくじゃらの手をバタバタさせてまだ何か言おうとしている彼を制しながら、俺は人質達を見やって唇に人差し指を立てた。

彼らは事件が解決した喜びよりも、今目の前で起こった事を理解出来ずにキョロキョロしている。入って来るなり北田は大小さまざまな秘密をだだ漏れさせていたし、これ以上聞かれてはマズイ。

「ああすいません。では僕は現場調査に入りますから、坂本さん達は下で休んでいて下さい。お疲れ様でした。いやなに、休むといってもほんの5・6分ですから、のんびりコーヒーでも飲んでいればじきに済みます。足りなければゆっくり煙草を吸って貰っても結構です。調査も先程言いました通り、これといって大した事をする訳じゃ無いんですがね」

 お前が喋ってる間にその時間が経ってるだろう!

しかしそこで長い北田の話もひと段落付いたようなので、チョコマカと現場の調査を始めた彼を残して俺達は階段を下りた。


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