ロ包 ロ孝
「でもそのジャンパー、呼び込みの兄ちゃんみたいじゃないか?」

 ここでも言われたか。もう3軒目だ。里美と栗原の視線が痛いが、気付かない振りをする。


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 夜になり、空はすっかり暗くなったが商店街のメインストリートは店の照明やネオンで、真昼のような明るさだ。しかし表通りから1本奥に入ると、人通りも疎らになり薄暗い。

事件の多くはこういう場所の、また更に人目の及ばないような物陰で起きていた。

「メインストリートが明るいから、裏を見ると余計に暗く感じますね。
 これじゃ暗がりで何かが起こってても気付かないっすよ」

 早速その夜から巡回を始めた俺達は、昼間の内にピックアップしておいたポイントと、今迄事件の起こった現場を重点的に見回っている。

「視認性が悪い点もそうだが、表通りが騒がしいからちょっとやそっとの声では掻き消されてしまうな」

「気を付けよう、甘い言葉と暗い道。よね」

 神妙な顔をして辺りを窺う里美。

「異常はないようだ。次のポイントに行くぞ……栗原っ!」

 飲み屋の裏口の階段を登って行くコンパニオンを下から覗いていた栗原の耳を引っ張り、どやし付けた。

しかしこうして見回ってみると、繁華街の周りには無数に危険なスポットが有るのが解る。まだ日本は治安が悪い方ではないからいいが、ここが海外だとしたらゾッとする。

「里美、栗原。3人だけでは監視が行き届かない。【朱雀】(スザク・闘の裏法、地獄耳)を使って聞き耳を立てておいてくれないか? 音域を全部使ってな」

 栗原は頷いているが、里美は憮然とした表情だ。

「どうかしたか?」

「うぅ〜ん。多分徒労に終わると思うわよ? 試しに淳もやってみたら?」


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