ロ包 ロ孝
「しかし今日は凄い人だなぁ」

 ビル周辺の巡回に当たっている栗原は、余りの混雑に思わず独りごちていた。休日ともなれば普段の何倍にも人出は膨れ上がる。

「まだ時間も早いし、賊は現れないと思うけど油断は禁物だよな」

「栗林さん、ご苦労様です。こっちは異常無しです」

「ああご苦労さんっス、引き続きお願いします」

 その時、遠くの方から急ブレーキの音がした。

  キキィーッ! ガシャン

「あれ! 今の聞こえましたか? 事故じゃないですかね」

「そうかも知れないっす! 駅の方からでしたね」

 その時里美達は、正に現場を目(マ)の当たりにしていた。


∴◇∴◇∴◇∴


「警察呼びましょう、救急車もだわ?
 みんなは車の下に入っちゃったバイクの彼を、頭を動かさないようにそぉっと引き出して!」

 サン・フラワー通り商店街には比較的交通量の多い道が2本横切っているが、その一方の道を直進していたバイクに脇道から出ようとしていた車が接触したのだ。

「駄目です。山岸さん。ヘルメットがしっかり食い込んでいて動かせません」

 里美はすぐさま指示を飛ばす。

「こうなったら2人を呼ぶしか無いわね。達っつあんは救急車の手配と警察に連絡して!」


∴◇∴◇∴◇∴


「俺だ、どうした?
 ……それで?
 ……ああ、そうだな。解った、すぐ行く。
 すいません。事故が有ったみたいなんで行ってきます。
 いや、うちのメンバーじゃないのでご心配なく……」

 同行したがるメンバー達を「留守番が必要だから」となだめすかし、事務所を出て栗原に連絡を取る。

「やっぱり! 聞こえたんすよ。……はい、解りました」

 栗原は電話を切ってそこに居たメンバーに伝えた。


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