ロ包 ロ孝
「やっぱり事故みたいっす。俺は処理に行ってきますから、そのまま巡回の方を宜しくお願いします」

「頑張ります。栗林さんもお気を付けて」


∴◇∴◇∴◇∴


「山岸さぁん!」

「栗林、甘えた声出しても駄目よ? それどころじゃ無いんだからっ。坂口さんは?」

「おう、ここだよ。しかし酷いな」

 直進中に接触されたバイクはバランスを失って転倒し、路駐していた4WDの下に滑り込んではまってしまっていた。

「暗いな。照明を持って来れるか? おーい。大丈夫か?」

 懐中電灯で照らし、屈み込んで声を掛けてもまるで無反応だ。

「さっきから呼び掛けているんですが、聞こえている様子じゃないですね。意識がないと思われます」

 俺達の動向を大勢の野次馬達が遠巻きに見ている。

「達っつあんと君は後ろのバンパーを持って、力一杯車を持ち上げてくれないか?」

「ええっ? 自分達がですか?」

「頑張りますけど、無理っぽくないですか?」

 渡辺達はいささか及び腰である。

「いや、勿論山岸と俺も手伝うよ。
 それに力が3倍になる特別な気を送るから、2人で軽く持ち上がるだろう」

 力の強そうな2人の力を【玄武】(ゲンブ・者の裏法)で3倍にすれば、俺達が【者】を使って自らの力を倍増するよりも強大なパワーが得られると踏んだのだ。

「また例の法術ですか。3倍の力が出るなんて、やっぱり教えて貰いたいなぁ……」

「…………」

「ぃゃ、ぁ、ぅ……じょ、冗談ですよ! 冗談! はっはは」

 渡辺は無言で里美から放たれる鋭い槍のような視線に気付いて口ごもった。

「じゃあ行くぞ? 栗林は下の彼をゆっくり引き出してくれ。いいか? フゥゥウウウ」


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