ロ包 ロ孝
 俺は変装を施して皆に接していた事と、立場を偽っていた事を彼に詫びた。(実際はまだ偽り続けているのだが……)

「はぁ、なるほど。やっぱりそうか!」

 大きく溜め息を吐くと彼はようやく納得して肩の力を抜き、ソファーに深々と座り直した。

「絶対普通の人じゃないって、皆で噂してたんですよ。
 ……じゃあ栗林さんや山岸さんも変装してたっつう事ですか?」

 俺の正体が解ったので途端にフランクになり、再び身を乗り出して聞いてくる彼。ここではもう必要以上に正体を秘匿する意味も無い。

活動の拠点として今後有用に使える場所でも有るし、『海袋エンジェルス』の皆には本当の俺達を知って貰うのが得策だ。

「ええ、そうです。……そうだ。今夜2人も呼びますか? 巡回が終わる頃にまた出直しますよ」

 メンバーが揃っている時でなければ説明が面倒だし、舘野さんにも挨拶をしなければ。

「非番の奴等にも声を掛けますよ。楽しみに待ってます」と手を振る彼を後に、俺は早速向かいの『銀杏』に赴いた。

「ごめんください。ご無沙汰しております」

「ありゃ、久し振りだね坂口さん。顔変えたんだね」

 さすがは舘野さんだ。一発で俺だと見抜いている。

「以前お世話になった時は変装させて頂いてたんです。
 名前も本当は坂本と言います、身分を偽って申し訳有りませんでした」

 舘野さんはさして驚いた様子も無く、俺の言葉を受け止めた。

「坂口さん、いや坂本さんだったね。素人じゃないとは思ってたんだね。
 やっぱり裏が有ったという事だね?」

 俺は音力で用意して貰った『第二特殊機動隊隊長』という役職の入った警察手帳を舘野さんに提示して見せた。


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