ロ包 ロ孝
「……ん。ああそうだ。
 ……でもな。俺だって明日は朝から電車で2時間は掛かる場所に現調(現場調査)だぞ?
 ……俺はな、里美の本当の顔がどれだけ可愛いか見せたいんだよ!
 ……最近は忙しかったし、それを口実に少しだけでも逢えるだろ?
 ……ああ、待ってる。栗原も連れて来いよ?」

 ふふふ。あいつも単純だな。

電話をして栗原と里美を呼び寄せた。里美は最初、何だかんだと言っていたが、結局の所は俺と逢いたい気持ちが先に立つのだ。


∴◇∴◇∴◇∴


 マン喫で時間を潰していた俺は、いい加減尻が痛くなったので会計を済ませて外に出る。もうそろそろ里美達がやって来てもいい頃だ。

  プヮァァァン

 俺が煙草に火を点けると同時にクラクションが鳴った。いつ聞いても電車の警笛に聞こえるそれは、栗原の車が到着した事を告げていた。

「お疲れさん。エンジェルスの皆も巡回を終えて戻っている頃だ。じゃ、行こうか」

 運転席の窓越しに栗原へ声を掛けた。左腕を見ると時計の針は2時を少し回った所だ。

「ふゎ、ぁあ。あたしもう眠いんですけどぉ」

 大あくびをしながら車から降りようとした里美は、高いステップから足を踏み外してよろけた。

「もう! 栗原ぁ。この車、無駄にデカ過ぎるのよ」

 タイヤをヒールのかかとでガシガシ蹴りながら栗原に絡んでいる。

 奴も眠いだろうに、とんだとばっちりだな。

「この車は俺と違ってMじゃないんすから、そんなにイジメないで下さいよぉ」

 里美は聞こえているのかいないのか、もうタイヤを蹴るのはやめて、腕を絡めて腰を回したりのストレッチをしながら眠気を追いやっている。


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