ロ包 ロ孝
『課長! ついに我々もエージェントとして一本立ちする事になりましたよ!』

 昼休み。会社を辞めていった三浦から、明るい声で報告の電話が入った。

「おめでとうございます。根岸さんから聞きましたよ。
 良かったですね、三浦さん! いよいよこれから本領発揮出来ますね」

 今回ばかりは事前に根岸からの報告が有った。三浦と俺達のチームとは活動エリアがバッティングするからだ。

相談の結果。彼らがまだ経験の浅いユニットである為、比較的難易度の低い案件を担当させる事になった。扱う案件のレベルに依って分担し合う事で、お互いをサポートする訳だ。

「それでどうですか? 伊賀流忍法の修行の方は」

 少し間を開けて三浦が言う。

『……お師匠、いや舘野さんは大変懇切丁寧に我々の面倒を見て下さっています、ただ……』

「お師匠でいいじゃないですか。呼び慣れたように言って頂いて結構ですよ? 」

 心無しか三浦の声がトーンダウンしたようだが、どうしたのだろう。

『はい。……お師匠は、私達が修行している忍術一切について他言無用と仰いまして……』

 それはそうだ。俺達にしても裏法については4人だけの秘密なのだから。

「なんだ。そんな事ですか。
 勿論そういう事なら話して頂かなくても結構ですよ? 舘野さんも伊賀流の伝統は守りたいでしょうし」

『でも坂本さんに隠し事をしなければならないのは心苦しくて……』

 三浦の忠義心は有り難かったが、俺だって彼に秘密にしている事だらけである。寧ろ後ろ暗いのはこっちの方だ。

「これからも師弟として舘野さんにお世話して貰うんですから、筋は彼女に対して通すべきじゃないですか?」


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