ロ包 ロ孝
「なぁんか淳、わざとらしいのよね。何か隠してるでしょ」

 やはりエスパーだ。すっかり心を読まれている!

「いや、エンジェルスのメンバーが気に掛かっててな」

「そうか。そうよね、みんな上手く行くといいけど……」

 今度こそ大丈夫だろう。

「それはそうと里美、俺に用事でも有ったのか?」

「ああっ! そうだった。人事部の小宮山部長に聞いたんだけど、課長補佐は大谷専務の息子さんの線が濃厚みたいね」

「なんだって?」

 大谷専務の息子と言えばまだ新入社員に毛が生えた程度の若造だ。それが主任を飛び越して課長補佐なんて、こなせる筈もない。

「ま、まあ……切れ者で名を馳せた専務の息子さんだ。上手くやってくれるだろう」

「そんな事言ってぇ、ホントは『使えない若造を寄越しやがって』って思ってるんじゃないのぉ?」

 エスパー決定!


∴◇∴◇∴◇∴


 エンジェルスの面々が修練を始めてから数週間が経ち、俺は海袋を訪れていた。

西口のホテル街を抜けた所に有る『喫茶ジャルダン(庭)』で、渡辺達の経過報告を聞いている。ここのロイヤルミルクティーとフレンチトーストは何しろ絶品なのだ。

「なんで『銀杏』じゃないんですか?」

 渡辺がまず口を開く。『銀杏』では舘野さんに筒抜けだからだ。

「フレンチトーストに付いてくるベーコンと、サラダに添えられたパルマ産のプロシュートが絶品だからだ。
 ロイヤルミルクティーとの相性も、これまた格別だしな」

 しかしどのようにそれを伝えるべきか、俺は思い倦(アグ)ねていた。

「確かに旨いです。うん、値段が張るだけは有りますね。……って、そういう事じゃない気がするんですけど」

 渡辺には俺が言い澱んでいる事がお見通しのようだ。


< 230 / 403 >

この作品をシェア

pagetop