ロ包 ロ孝
 打撃の【皆】(カイ)と切断の【陣】(ジン)も問題ない。僅かだが到達距離が短くなる位か。

『見た目も全然変わらないわね』

「そうか。じゃあ【前】(ゼン)を放ってみるぞ?」

 雨は更にその強さを増し、まさにバケツをひっくり返したように殴り付けている。その雨音も凄まじい。

 俺は注意深く気を蓄め始めた。身体にも喉にも違和感は感じられない。

「ヌォォォオオ……」

  ビビッ ビシビシッ!

 全力にシフトして気を込める。俺の周りで放電が始まった。

  バヂッ バヂバヂヂィッ ジュワッ

 雨粒が放電に触れると、忽ちの内に水蒸気と化す。

「コォォオオオ」

 闇にほの白く立ち昇る湯気の中、空気を肺一杯に吸い込むと全身に電流がほとばしり、身体が薄青く発光し始める。

そして俺は【前】を放った。

「ザッ!」

  ガァァァァァアッ

 俺の口から放たれた龍は辺りの地面ごと灌木を剥ぎ取り、山肌を駈けて行く。

 !

 真っ直ぐ放った筈の【前】が里美の居る方へ逸れて行く。マズイ!

 !!!!!

 すると突然龍がきびすを返し、俺に向かって突進して来た。

「危ないっ! ヮァァァアアア!」

 咄嗟に盾の【列】(レツ)を張り、向かってきた龍を受け止める。

  ガァァァァッ! ガァァァァッ!

 龍は口を開け、大きくうねりながら【列】を徐々に侵食してくる。

『淳っ、危ないっ!』

「させるかっ、クワァァアアアッッ!」

 俺は最後の息を振り絞り、ひときわ強く【列】を放った。

  ガゥォォオオオ……ォゥン

 俺の【列】に包まれた龍は、断末魔の叫びを残し掻き消えていった。

『淳、淳、ねぇ淳、大丈夫なの?!』

 半ばパニックを起こして里美が問い掛けてくる。


< 279 / 403 >

この作品をシェア

pagetop