ロ包 ロ孝
 2台の修理費は軽く見積もっても200万は下らないという。

「ええっ?! そんなにかかるんですかっ? ホントに、何と言ったら……誠に申し訳有りませんでした」

『こちらの説明不足も有ったのでしょうし、人命を救えたのですから今回は目を瞑りましょう』

「助かります。次の案件……」『しかし!』

 根岸は鋭く俺の言葉を遮った。

『次からは自腹を切って頂きますのでそのおつもりで』


───────


 あれやこれやですっかり昼休みを過ぎてしまい、三浦の後任で課長補佐になった大谷は先に仕事を始めていた。

「すいません、色々ごたごたが有りまして……」

「いえいえ。二足のわらじを履くのは大変だと思います。
 私も隙あらば何か始めてやろうと思っているんですけどね。今はその為の社会勉強期間といった所です」

 ジュニアというのは大概出来が悪い。ましてや経験も浅いとなれば、専務の息子など使い物になろう筈もない。とタカをくくっていた俺だったが、彼はなかなかどうしてキレ者だった。

「ほお、大谷さんは結構野心家なんですね」

「親の敷いたレールに乗っかってるだけじゃ、只の腑抜けたボンボンですから」

 大谷専務の息子とこんなにくだけて話したのは初めてだ。人は付き合ってみなければ解らないものだな。

「でも大谷さん。失礼ですが、正直ここまでデキる男とは思いませんでした」

「そう、新人に毛が生えた程度のお坊ちゃまですからね!」

 ここにも超能力者発見!

「いえ。そんな。大谷さんのお陰で楽させて頂きましたよ」

「課長の敷いたレールに電車を走らせただけですって、ああ。これじゃいつまで経ってもボンボンから抜け出せませんね、ハハハハ」


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