ロ包 ロ孝
 なんだか、もう何年もビジネスパートナーを勤めている相方のように、打てば響く手応えの大谷。

「ところで。噂に聞いたんですが、課長は随分変貌を遂げられたご様子で」

 俺が? ……確かに『クールマン』のイメージを払拭しようと努力はしている。成果の方は定かじゃないが……。

「受付の大竹さんが言ってましたよ。
 山崎さんと付き合うようになって、坂本さんの人格が全く変わったって!」

 ああ、そういう事か。自分では自ら変わろうと奮起したつもりだったが、これがもし蠢声操躯法に出会わなければ、変わろうとも思わなかっただろう。

「里美もそうですし、栗原もあそこまで明るいキャラじゃありませんでした。
 別の仕事をしているという気概に、人のモチベーションやテンションをも上げる効果が有るみたいですね」

 実際は蠢声操躯法の効果なのだが、大谷には商売の話に置き換えて説明する。

「なるほど。私が入社した頃の山崎さんは確かにそうでしたね。静かな山崎さんも魅力的でした……」

「そうでしょう? 私もそう思います!」

 静かで上品だった頃の里美の話で、大谷としばし盛り上がった。


∴◇∴◇∴◇∴


『坂本さん、お仕事です。また難事件ですよ?』

 暗視スコープの分も頑張らねばならない。今日も俺達は颯爽と現場に向かうのだった。



『咆哮』第五部
〜新しい波〜

《完》


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