ロ包 ロ孝
「ありがとうな、送って貰って」

「いや、俺も機会が有れば来ようと思ってたんで、一緒に来れて良かったっス」

 これもたまたま空いていた栗原に声を掛け、ここまで乗せてきて貰ったのだ。

都内某所に有るこの霊園に三浦氏は眠っている。ご家族からのご要望で派手な墓標等は無いが、同僚だったエージェント達が代わる代わる訪れているので、花や供物の途切れる事は無い。

「みんなちゃんと来てるんすね。なんか俺、同じエージェントとして申し訳ないっス」

 現在栗原は最前線でエージェント達を引っ張っている、音力で一番多忙な男と言ってもいい。三浦氏の墓参りも初めてだそうだ。

「そんな事はない、そして三浦さんは解ってくれてるさ。栗原が頑張ってるのはな」

 俺は墓前で現在の音力が果たしている役割を報告し、三浦氏が救ったエージェント、5チーム19名の活躍を伝え、彼が生前愛飲していた『トップオブザマウンテン』のディープブレンドを供える。

久し振りに会った食堂のおばちゃんからも饅頭を貰ったので、暫し三浦氏の思い出と共に墓前でお茶会を催した。

「やっはりディープは濃過ぎるな、苦い!」

「淳は子供ねぇ。ほら、これ食べて。こら栗原! お前はズに乗ってお饅頭食べ過ぎよ!」

「馬鹿、三浦さんの分はちゃんと残しておけ!」

「ふぁぁあい。でも旨いんだもん、この饅頭」


───────


 無事墓参りも済んだ。荷物を車に積み込んで、帰り支度を整えた里美が言う。

「はぁっ。無駄に大きいこの車は考え物ね。荷物を積むのも一苦労よ? そろそろ買い替えたら?」


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