ロ包 ロ孝
 元は軍用の車体を使っている栗原のそれは、確かに日本には不向きな大きさだ。

「格好は良いと思うんすけどね……でも最近はやっぱりファミリーカーの方がいいかなぁ、なんて気がしてるんすよ」

 長年乗って来た愛車を撫でながら彼は言った。

「なんだ? 結婚する気にでもなったのか? 暫らくその気は無いなんて言ってた癖に。
 相手はやはり受け付け嬢の……」

 俺の言葉を待たずにすかさず突っ込んで来る里美。

「何? 栗原! 貴方大竹さんにもちょっかい出してたのね?」

「大竹さんにもって……他にも手ぇ出してるみたいじゃないすか」

 なにやら後ろ暗い事が有るのか、力なく反論する栗原。

「あら、そうやってトボケるの? 里美さんも随分舐められたものねぇ。
 栗原の浮き名の流しようは逐一耳に入って来てるのよ?」

「それマジっスか? ……いやぁ、やっぱり里美さんには適わないっス」

「久し振りにヴァシーラで尋問してやるわ? この後予定無いでしょ? どう?」

「ヴァシーラと言えばこの間……」

 俺が話を切り出そうとすると突然携帯が鳴り響き、ほのぼのとした時間は強制的に終了された。

『坂本さん。お仕事です』

 根岸からだった。おおまかな内容を伝えるとすぐさま栗原は現場に急行したが、結局彼が出る程の案件では無かった。

墓参りの後、術の指導で修練場に行った里美は定時上がり。

音力本部で根岸と打ち合わせを終えた俺と、オペレーションが無くなった栗原。

珍しく3人が3人共空き時間が出来たので、俺達は里美の提案に乗る事にした。


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