ロ包 ロ孝
 そしてその威厳の塊のような男性達が、俺達に深々と頭を下げる。一応礼は弁えている、という所を見せようとしているのか。

「おほっ。既に坂本女史からお聞き及びだと思いますが、事態はかなり逼迫して……
 おほおっほっ! おほっ。ああ……失礼しました。
 逼迫しておるのです」

 うちの爺ちゃんが毛玉ジジイなら、こちらはツルッツルの禿げジジイだ。タンが絡んでいて話が聞き辛い。

───話が出た序でだが、うちの毛玉ジジイはまだまだ元気にやっている───

この男性が一応のリーダーなのだろう。見た目はほんわかとした好好爺で、陰謀や策略とは縁遠そうに見えるが、腹の内はブラックホール並みの黒さに違いない。

「はい、存じています。この機に裏法も海外組へ伝えようかと思っていた所です」

「おおっ」「それは有り難い」「願っても無い事ですな」

 シンクタンク側も、こんなにすんなり裏法を手に入れられるとは思っていなかったのだろう、かなりの歓迎ぶりだ。

「ええっ? 淳。いいの? そこ迄しちゃっても」

 里美も裏法については音力へ伝授していない。裏蠢声操躯法宗家としての俺を尊重してくれていたのだ。

「ああ。敵国に乗り込むんだし、万全の態勢を取らせたいからな。
 皆さんも当然ご存知だとは思いますが【玉女】(ギョクニョ)はリスクが大きいので、私が認めた者にだけ伝授します。
 それでもよろしいですね?」

「ああ勿論、おっほっ。皆さんもよろしいですな?」

 盗聴や、里美を使ったスパイ行為の厭味も込めて「ご存知の通り」と言ってみたが、まるで通じていないみたいだ。


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