ロ包 ロ孝
 数日後、本当の音力の中枢を担う人物達、『パワー・オブ・ザ・ヴォイス』のシンクタンクと接見する。

「ここ、音力っすよね」

「そうだが……一緒に入って来たじゃないか」

「こんな場所が有ったんですね」

「ああ、俺も知らなかった」

「坂本さん、栗原さん、こちらにどうぞ」

 その薄暗くだだっ広い空間にスポットライトで照らし出された3つの椅子に、俺達は座らされた。

「もうひとつは里美の席だな」

 辺りを見回すと、テーブルが扇状に俺達を囲んでいて、余計な装飾は一切見当たらない。

「あそこに音力のお歴々が座るんですね」

  カツカツカツ……

「里美」

 花の香りを伴って彼女が着席する。

「ごめんなさい、裏で話をしてたから」

  カシャッ

 奥のドアが開くと逆光の中、10名程の人影がこちらに向かってきた。

「椅子がリフトアップしてくる演出じゃなかったんですね」

「ばかね、アニメじゃないんだからそんなとこにお金かける訳ないでしょ?」

「そりゃそうだ」

「おっほん! んーむむ。最初にお詫びを申し上げなければなりません。
 長きに渡ってあなた方をたばかって来た事。大変申し訳なく存じます」

「坂本さん、俺。あの人達見た事有る気がするんですけど……どこでだったかなぁ……」

 ひそひそと話し掛けて来る栗原に俺は返した。

「お前に便所掃除を言い付けた奴らじゃないのか?」

「ああっ、そうだ! そうでした」

 実際の所、便所掃除は俺が提案したのだがまあいい。栗原は合点がいったようだ。


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