ロ包 ロ孝
「どうした岡崎くん。マウスがどうかしたか? ちっとも哀れじゃないじゃないか。勇敢に志願してくれたんだから!」

「え? 坂本さん、全部聞こえてたんですかっ! お、お恥ずかしい限りです」

 思わず吐いた弱音を聞かれてしまった岡崎は、目を見開くばかりで、驚きを隠せない。

「俺達には何も聞こえなかったのに、凄げぇ!」「凄いですよ、坂本さん」

 俺も裏法を最初に見たときは彼らと同じく思ったものだ。

「そして【玄武】(ゲンブ)だが……ああ、達っつぁん。そこの重りを持ってきてくれ」

「ここのを全部ですか? おい、佐田も手伝え」

「渡辺さん。俺は『さだ』じゃなくて『さた』ですっ!」

 2人は俺の足元に用意してあったバーベルに重りをはめ込んでいく。

「坂本さん。出来ました。」

 バーベルには400kgの重りが付いた。

「岡崎くん。これを挙げられるか?」

「まず無理ですねぇ。【者】(シャ)を使っても300kgがいいとこかと」

「達っつぁんは力持ちだから出来るよな。車も持ち上げる位だから」

 そう言われて渡辺は気付いた。海袋の時に【玄武】を施された事を!

「ぬふふ。岡崎は弱っちいなぁ、代われ替われっ」

「よし、達っつぁん送るぞ? フゥゥゥウウ」

「はい。フゥゥゥウ」

 渡辺がバーベルを掴んだのを確認して【玄武】を送る。【者】を使いながらひょいと簡単に持ち上げた渡辺を見て岡崎は言った。

「なるほどそういう訳か。坂本さん、ちょっといいですか?」

「なんだい? 岡崎くん」

「ぉわっ、ととっ」

 俺が喋って【玄武】が途切れると渡辺はバーベルを支えていられなくなり、慌てて床に投げ捨てた。


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