ロ包 ロ孝
「くっ! これは一体、どうしたことだ?」

 リハーサルを抜け出した関達は、総書記の居る宮殿近くの草むらで立ち往生していた。

「事前の調査と話が違うぞ? まるで戒厳令下のようじゃないか!」

 正門は固く閉ざされ、門を守る衛兵が2人。そこまでは予想の範疇だったが、更に戦車が2台鎮座している。

「城壁まわりも5m毎に衛兵が立っています。彼らがトイレに離れる時も交代の兵が来てからで……全く隙が有りません」

「関さん。衛星からの映像も確認してみましたが、城内にも各所に兵が配置されています。
 これは夜を待って暗闇に紛れなければ侵入は不可能ですよ」

 いくら国家元首の宮殿だからといっても、この警戒はものものし過ぎる。戦時下なら考えられなくもないが、今は通常の警備がなされている筈なのだ。

「ううぅん、参ったな」

 本隊がリハーサルに追われている間に関達が宮殿に侵入。内部の状況を把握して、あわよくばそこで総書記を手に掛ける作戦だった。

「ややもすれば、さっさと事を済ませて帰れる予定だったんだがな。
 宮殿内に入れないのでは仕方がない、一旦戻るしか手は無いだろう」

 宮殿の回りは一定の範囲で伐採、整地が施してあるので、侵入する為には必ず一旦完全にその身を敵前に曝さなければならない。

少数の敵を一時的にやり過ごすには忍術も有効だが、この場合のように多角的な監視の目から逃れる事は難しい。

三浦はそう判断すると、宿舎へ帰還する事を決めた。


∴◇∴◇∴◇∴


「しかし驚きました。何しろ尋常じゃ無い厳戒体制なんですから。
 隣国といざこざでも起きているんでしょうか……」

「いや、そういった情報は入って来ていません。
 ……何が有ってもおかしくない国ですし、……我々が甘過ぎたのかも知れませんね」


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