ロ包 ロ孝
「ぷっ! あっはは……いきなりそっちの話ですか。こりゃ参ったな」

 結局噴き出してしまった俺に山本が突っ込んで来る。

「笑い事やないですよ? こっちは死活問題なんやねんから」

 そう言いながらも彼女らは、部屋のあちこちにその電卓然とした物をかざしている。

「すいません。今回は主催者側の我々も、慣れない舞台装飾迄して人件費を削っている有り様でして……」

「せやけど坂本さん。我々が提示した最低ラインは守って貰わな困りますぅ」

 おお怖っ。大阪の人と賃金交渉なんてするもんじゃない! これが現実じゃなくて良かった。

そうこうしている内にチームの1人が部屋を出て行った。


───────


「カメラと盗聴器のチェックをしましたけどぉ、作動している物はこの部屋には有りませんでした」

 暫くすると戻って来た彼女が言う。

「さっきみんなが持ってたコレは電卓に見えますけど、超高性能の電磁波探知機です。
 向こうのカメラで取った映像をアナログ波に変えて、この部屋でチェックした電磁波と照らし合わせます。
 波が干渉や増幅などを起こせばどこかにカメラが有る筈です」

 彼女達は、パソコンに写った心電図のような物を見せて説明した。

「ここに来た時に取り上げられたパソコンが、昨晩チェックが終わったのか返還されました。それで各部屋をこうして見回ってますぅ」

「とすると、この部屋にはそれらしき反応は無かったんですね?」

 自らの手の内をつまびらかにするということは、即ちそういう事だろう。

「ええ、有りませんでした。磁気センサーで壁裏もトレースしましたが、原始的な方法である送達管も無いです。
 何か画期的な新アイテムでも無い限り、こちらの話を聞かれる事も、姿を見られる事も有りません」


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