ロ包 ロ孝
 今迄盗聴や盗撮の恐れから気を抜けなかった俺も、ようやく肩の荷を降ろせる。

「そりゃ良かった。そうなってくると、風呂場の遮音材は無駄だったようですね」

「いえ。この探知機は、カメラや盗聴器が作動していなければ発見出来ません。あの措置は有効です。極秘事項の打ち合わせはひき続きあそこでお願いしますぅ」

「なるほど。他に気になる点は有りましたか?」

「今のところ何も有りませんでした。他の部屋もチェックしてきますね?」

 里美の印象とは真逆の、いかにもお堅い感じがする彼女らだが、工学畑で野郎共の向こうを張って来たのだろうから致し方無いのか。

彼女らの為にも、さっさと片を付けて帰りたいものだ。

「ああ山本さん。里美はこれからどうしろと言ってましたか?」

「あ、すいません。お伝えするのん忘れてました。
 ここでのんびりしといて下さいとの事でした。外出は基本的に厳禁だそうですけどぉ。
 ……それと、扉に立ち入り禁止の貼り紙をしてある場所には絶対立ち入らんようにて言うてはりました」

 また随分と窮屈なお達しだ。しかし作戦会議にはもってこいだとも言える。盗聴や盗撮の恐れも無く、1日準備期間が与えられたのだから、このチャンスは最大限に活かさなければ。

大阪チームはその後も捜索を続けたが、結局全室で盗聴器等の設置がされていない事が判明した。


───────


「坂本さぁん! 会いたかった!」

 渡辺がいきなり俺に抱き付いてきた。

「なんだなんだ達っつぁん! こんな事して気色悪いぞ!」

 渡辺はその刈り揃えられた金髪頭をガシガシと掻いて照れている。

「だって普通に話も出来なかったんですよ? なんてストレス! なんて不自由」

 大袈裟に身振りを加えながら熱弁する渡辺。こいつも相当溜まっていたんだろう。


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