ﾛ包 ﾛ孝

　週末恒例の音力はいつもとさして変わらぬ内容だった。

いい機会なので、少し術について触れようと思う。

　臨(ﾘﾝ)兵(ﾋﾟｮｳ)闘(ﾄｳ)者(ｼｬ)皆(ｶｲ)陣(ｼﾞﾝ)列(ﾚﾂ)在(ｻﾞｲ)前(ｾﾞﾝ)

　……術の名前は密教等で使われる九字(ｸｼﾞ)に倣(ﾅﾗ)って付けられている。

【臨】ﾘﾝ
歌である。術に臨む環境を整える為の物。

【兵】ﾋﾟｮｳ
癒しと鍛練である。体調を整え、闘いに向けての態勢を作る。

【闘】ﾄｳ
情報伝達である。集団での闘いに於いて、最も重要な術である。

【者】ｼｬ
底力である。素早く走り、重いものを持つ。【兵】を【闘】の波長に乗せる事に依り3倍の効果が得られる。

【皆】ｶｲ
打撃である。敵を薙ぎ倒したり壁を崩したりする。

【陣】ｼﾞﾝ
刄(ﾔｲﾊﾞ)である。かまいたちに依って対象物ひとつを切り裂く。

【列】ﾚﾂ
盾である。音の壁が全てを跳ね返す。

【在】ｻﾞｲ
洗脳である。人や動物の脳波を操り己の意のままに動かす。

【前】ｾﾞﾝ
全ての破壊である。原爆が起こす衝撃波の様に、あらゆる物を吹き飛ばす。

以上が蠢声操躯法の術である。

高倉家は元々甲賀流忍術の流れをくむ忍びの家系だったが、独自の法術を編み出して高倉流を興した。

祖父が『仕掛け箪笥』を作る原因となった倉への侵入未遂事件の際に、賊の侵入を許さなかったのは、そこが忍者屋敷だったからである。

蠢声操躯法は忍びの術ゆえ大々的に歴史に残る事は無かったが、そこここの合戦で幾度も功名を上げた。その不思議な法術が起こした奇跡も、少ないながらちらほらと歴史に印されている。