『縛』
「もう、手、放してよ。」

小声で抗議する。

「いやだね。俺、わがまま
だから。」
「適当な事言って!」

こういう事、しないで。


人恋しくなるような事。


思い出させないでよ。


「ちーっす。」


彼は、私の心の内なんて
知りもしないで、そのまま、
リビングに入っていく。

私も引っ張られる様に、
中に入った。

「おー。志央、相変わらず、
待たせてくれるよな。
・・・って、カノジョ?」

中にいた男の人が、
言った。

「違うわよ。
私と同じ会社の方で、
鈴木沙羅さんよ。」

佐伯さんが、いいながら、
つながれた手をみて固まった。

ああ、もうっ。


言わんこっちゃない。

「そのっ。コレは・・」

ごまかすような言葉が、
咄嗟に口をつかず、苦笑した。

「鈴木沙羅さんね・・
鈴木サラ・・」

佐伯さんの横で、
さっきの男性が、
何かを考える様に呟いていた。


志央が、口を開きかけた瞬間、
その男性は、驚愕の声を
あげた。

「!!

もしかして、もしかして・・!!

第五中の、
サラ先輩じゃないっ?!」

えっ?!

思いもせぬ台詞に、
相手を直視した。


 
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