逢瀬を重ね、君を愛す


「やればできるんだ。」


出来上がった巾着を掲げる。


「薫に…あげようかな。」


成長した所を見せたい。
それに、薫なら喜んでくれそう。

すると、隣から静かに笑いが聞こえた。
ちらっと見ると、桜乃が口元を隠しながら笑っている。


「あ…やっぱり…図々しいかな?」

「いえ。」


落ち込んだ彩音に桜乃は微笑みかける。


「彩音は本当に帝が好きなのだと思って。」


初々しいわ、と呟く桜乃の隣で。
急激に顔が赤くなる。


「そ…!!そんなことっ!!」


言い返したいが、何も言えなくなる。

手元にある巾着を眺め、薫を思い出す。


そりゃ、薫の事は好きだよ。

でも桜乃だって、蛍さんだって。嫌みたらしいけど、清雅だって好き。


でも、いつも思う人は――


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