逢瀬を重ね、君を愛す

「…恥ずかしいのよ。」


そう言った桜乃の顔はどこか…寂しそうだった。


「昔は、「桜ねぇ、桜ねぇ」って可愛かったんだけど、今じゃ憎たらしいわ。」


グサッと最後の言葉と共に布に針を突き刺す。

それを見て彩音の背筋に冷や汗が流れるが無視する。それより。


「桜ねぇって……桜乃の方が年上なの?!」

「え?そうよ、2つ上。」


平然と答える桜乃に何も言えない。


――同じ年だと思ってた……


改めて桜乃の童顔を思い知る。

いや、蛍さんが大人っぽいのか。


「や、でも蛍さん…大人っぽくて、かっこいいもんなー」


そう言った彩音の言葉に桜乃の手が止まる。


「…桜…乃?」

「…蛍はかっこよく無いよ。」


そう言って手を動かす。

そう、いきなり大人びるから。


不安ななるのよ。
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