王国ファンタジア【流浪の民】
「……」

 少年が部屋の隅(すみ)にあるデスクで、何かの薬を調合しているようだ。

 もう1人の青年はベッドに寝ころび、腕を頭の後ろで組んで天井をぼんやりと眺めている。

“コンコンコンコン”

「! はいっ?」

 ふいにドアの方から音がして、少年は顔を上げた。

「失礼」
「どうぞ」

 入ってきた青年に、軽く頭を下げる。

「!」

 少年の前のデスクを見て、ベリルはすぐに気が付いた。

「グレード・エルニーグ?」
「! え、ええ。そうですけど……」

 部屋の真ん中まで足を進め、ベリルは小さく笑いかける。

「夜分にすまない。挨拶回りをしているのでね。ベリルだ」
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