王国ファンタジア【流浪の民】
「何、女になってんのよ」
「……わからん」

 波旬(はじゅん)は両性具有だが、ふとした事で性別が変化してしまう。

 しかし何故、突然? 女の香りを感じた訳でもないのに……しかも強く感じなければ変化などしない。

「あのベリルとかいう人間。男だったよな?」

「どう見ても、男だったよ」

 波旬は首をかしげるばかりだ。

「でも、魔界とは関係ないドラゴンだったら、帰ってもいいんじゃないか?」

「……」

 邪鬼の言葉に一瞬、眉をひそめる。

「ここまで来て手ぶらというのも気にくわない。あの人間も面白そうだしな」

 観光気分で少しくらい助けてやろうじゃないか。

 言った波旬に邪鬼は溜息を漏らした。

「あんたがそう言うなら、別にいいけどね」

 これってもしかして、あいつに乗せられてるのは私たちの方なんじゃないのか?

 そう思わずにはいられない邪鬼だった。
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