王国ファンタジア【流浪の民】
「……」

 マルタはそれをじっと待ちながら、

「案外、“タラシ”だったりして?」
「ん?」

「おまっ……プレゼントしてもらってその言い草かよ!」

「彼は自覚無く女を口説いてるタイプだと思うわ」とエナ。

「そこまで言う!?」

 ユリエスは、1人で2人にツッコミを入れる。

「……」

 自分から苦労を背負うタイプだな。ベリルは、少年に目を向けて思った。

「まあ、私もそのタイプだが」

 目を細めて笑い、ぼそりとつぶやいた。そして紅茶を傾ける。

「……」

 エナは、そんなベリルをじっと見つめた。

 戦士というには上品な腰つきと、世界を渡り歩いているようには思えない細身。

 でも……その雰囲気は、確かな戦士であるという落ち着きを持っている。
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