王国ファンタジア【流浪の民】
「私怨ではなく、誰かを守りたいという意志で立ち向かってほしい」

 憎しみからくる力では、大いなる敵に勝てはしないのだから。

「そういう相手くらいはいるようだな」

 ベリルは、キルテの表情にクスッと笑いをこぼす。

「! ばっ……んな奴いるワケねぇだろっ」
「彼は素直じゃないな」
「そうなんです」

 キルテは2人の言葉に声を張り上げる。

「だぁーっ! お前らなにいきなり仲良くなってんだよ!」

「俺は初めから好意的だけど」
「私も別に敵意は無いぞ」
「ふっ……ふざけやがって……」

 1人ばつの悪そうにしているキルテに、エークとベリルは笑い合った。

 そのあと、ベリルは眉をひそめる。

「大気が乱れている。この戦い、厳しいものとなるだろう」

 エメラルドの瞳がキルテをとらえた。
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