王国ファンタジア【流浪の民】
 ドルメックはますます眉をひそめる。生まれてこの方、こんなに警戒心の無い人間は見た事がない。といった顔だ。

 しばらくして飲み物の入ったカップが差し出される。

 ミントの爽やかな香りが鼻をついた。

 一息つくセシエル。そしてドルメックをチラリと見ると、何故か少し心配そうな顔をした。

「あのさ……」
「! はい」

 聞きにくそうに口を開く。

「もしかして……ベリルが何かした?」
「え? いや、そういう事じゃ……」

 この人、何も聞いてないのか。むやみに人に話す奴じゃないんだな。いやでも、仲間には話してもいいんじゃ?

 聞いたセシエルは、ぱあぁっと明るい顔になり頭をかいた。

「なんだー良かった。あいつほら、ああいうしゃべり方だろ~変に怒り買ったりとかするんだよね~」

 キラキラした笑顔で言われる。
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