王国ファンタジア【流浪の民】
「……」

 なんだろう、これ……ドルメックはカクンと肩を落とした。

 調子狂うんだよなぁ……この人。ベリルとは正反対の人だよな。

 太陽と月。そんなイメージが浮かぶ。

「……」

 困ってカップを傾ける。そこに──

「お?」
「!」

 帰ってきたベリルがドルメックに気付いた。意味もなく体が強ばる。

「あ、おかえり~」

 セシエルの声で緊張感が和らいだ。

「どうした?」

 短く問いかけられる。ドルメックは少し言葉を詰まらせ、ゆっくりした口調で発する。

「今日は、昨日の件で来たんだ」
「!」

 それに、ベリルはぴくりと眉を動かした。ドルメックは彼に目を向けずに続ける。

「俺の母を今まで保護していてくれた事と……人として扱い、帰してくれた事に対する礼と……」

 カップを握り、さらに続けた。
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