王国ファンタジア【流浪の民】
「ん。人が動けば、それだけ食料やモロモロの物が必要になってくる。それを引いてくれる者もね」

 ベリルはそう説明して、空を見上げた。

「! 早い……」
「え?」

“ヒヒイィィーーン!”

 ベリルは馬の手綱(たずな)を引いて鳴き声をうながした。

「!」

 そのいななきに皆、一斉にベリルに目をやり足を止める。

「戦士以外の者はここから距離を置け!」

 声を張り上げる。すると、馬車を引いていた者たちは慌ててそこから離れていった。

「おっさん?」
「来るぞ、気を引き締めろ」
「来る? 何が……」

 横にいたセシエルが、周りを窺うようにキョロキョロと見回す。

「!」

 空から、聞いた事のある音がした。

 ヴァラオムが現れた時の音だ。しかしこの音は……もっと大きなものが空を飛んでいるような……
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