王国ファンタジア【流浪の民】
“キイ……”

 風よけの薄い板を開き、ベリルはいろりの前に腰を落ち着けている長老に目を向けた。

「心は決まったかの?」

 老人は優しく問いかけた。

「……」

 少し、目を細めたベリル。

「本当に、私でいいのだな?」
「ぬし以外に誰がいようか」

 確認したベリルは、何も応えずに出て行った。

「ためらうな。ぬしは我の誇りだ」

 老人はぼそりとつぶやいた。

「ベリル! 受けたのか?」

 セシエルが出てきたベリルに駆け寄る。

「セシエル!」
「! はい」

 長老は入り口の処でセシエルを呼んだ。

「なんでしょう?」
「おぬし、ベリルの共をせよ」

「え?」

 突然の命令にセシエルは一瞬、固まる。
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