王国ファンタジア【流浪の民】
 ベリルはそれに唖然とした。そしてクスッと笑いをこぼす。

「心配ない。そのまま気を高めろ」

 バン! と背中を叩く。

「なあキク……」
「何? ひーくん」

 ヒイロウはドラゴンを見上げて、目を輝かせた。

「すげーよな、世界って」
「こんな時に何言ってんの……」

“ドオォォー!”

 ドラゴンの巨大な翼が、地にいる兵士たちをことごとく蹴散らそうとする。

「死んだらその世界も見られないよぅ!」

 キクが羽毛を逆立てて叫んだ。

「……っりゃあぁ!」

 ヒイロウの声と共に振り上げられた刀から閃光が走る。

“ザパッ!”

 ドラゴンの翼は1線に切れ目が走り、そこにいた兵士たちはその切れ目に逃げ延びた。

「ヒイロウ様をなめんな!」
「いいから早く逃げてぇ! ひーくんっ」

 キクが目をぐるぐるさせて雄叫びのような声をあげた。
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