王国ファンタジア【流浪の民】
「黒い力は暗闇しか生まない。黒い力に支配されたお前から、美しい世界など生まれただろうか?」

ベリルがつぶやくように言った。

{我は……なんと愚かだったのか}

 見開かれていた目を閉じる。

「今のお前となら、よい友になれたろう」
{……友}

 ディナスの脳裏に、かつて住んでいた世界が浮かぶ。

 仲間たちと暮らしていた時間……もうそれは遠い過去。

{我、は……自分自身で、全てを無くしてしまったのか。なんと愚かな}

 ドラゴンの目に、涙がにじむ。

{我は、なんという思い上がりだったのだろう。命は全て我の手の中だと傲慢(ごうまん)であった}

 その強大な力と存在がゆえの過ち……

[高い存在の者は許せる心を持たねばならぬ。でなければ、ただの悪鬼だ]

{小さきドラゴンよ。お前はこの世界にいて、それを成し得るのだな}

 ヴァラオムは静かに頷く。
< 195 / 246 >

この作品をシェア

pagetop