王国ファンタジア【流浪の民】
 鍛冶師は口笛を鳴らして、その太い腕を革袋に伸ばす。

「十分すぎるぜ」

「剣をひと振り。ダガーふた振り。残りで矢じりを頼む」

「! なんの矢だ?」
「クロスボウ」

 聞きながら、男は革袋に入っている銀貨を何枚か取り出して眺めた。

「剣はどれを?」
「グラディウス」

 全長60cmほどの刀剣だ。重量は非常に軽く造られている。

 ミスリルとは『ミスリル銀』と呼ばれる、加工しやすく軽く、強度に優れた稀少な金属の事である。

「お前らしい選択だな」

 男は鼻を鳴らしながら応えた。毛むくじゃらの腕を数回、回すと鍛冶道具を手に取る。

 ベリルはそれを見て、鍛冶師の家をあとにした。
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