王国ファンタジア【流浪の民】

滅びに向かう国

 ベリルは鍛冶師の処に来て、剣を品定めしていた。

 流れ戦士である流浪の民は、あまり重装備を好まない。

 そのため、鎧といった装備はほとんど見られない。厚手の革鎧がせいぜいだ。

 旅をしながらの仕事と言ったら、傭兵か酒場の用心棒などだが。

 偶然、出くわした旅団や商人の一団がガードとして雇う事もある。

 ドラゴンが飛び回るこのご時世、大きな旅団が移動する事は困難を極めていた。

 そのせいか、国全体が微妙な均衡を保っているようにも思われる。

 流通が滞(とどこお)れば繁栄も難しく、まさしく王国の危機はあらゆる処から訪れるのだ。

 小さな村や集落なら自給自足でなんとかなるだろう。しかし、王都や大きな街ではそうはいかない。

「ミスリルはあるか?」
「! ミスリルだって? 金はあるのか」

 鍛冶師は薄笑いで聞き返した。仲間であろうと金はもらう。それがルールだ。

「それで足りるか?」

 ベリルは小さな革袋をテーブルに投げ置いた。
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