王国ファンタジア【流浪の民】
 一同は王都に向けてゆっくり歩き出した。セシエルはもちろんキクを抱いたままだ。

「ベリル」
「!」

 ドルメックが後ろから駆け寄ってきた。そして、革袋を差し出す。

「すまない……使い切ってしまった」
「構わんよ」
「その剣、鞘(さや)がいるな」

 クラウンがひょこっと左から顔を出し、ベルトにむき出しのまま差し入れられている剣に目を向けた。

「その鞘。わしに作らしてくれへん?」
「細工師だったな。頼みたい」

 まかしとき! クラウンはドンと胸を張った。

「それで……あの」

 ドルメックは言いにくそうにベリルを見て視線を他へ移した。

「少しは、何か見えたかね?」
「!」

 青年はその声に言葉を詰まらせる。

「まだ……ピンとこない部分はある。けど、あんたを見てると解るような気がする」

 戸惑う声にベリルは目を細めて微笑む。
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