王国ファンタジア【流浪の民】
「あ!」

 セシエルが指を指す。集落の入り口で、仲間たちが2人の帰りを待っていた。

「「……」」

 互いに顔を合わせ、馬を進める。

「長老さま! ほらっ帰ってきましたよ」
「うむ……」

 サナはそう言って、遠くの影に大きく手を振った。

 2つの影を見つめる老人の、杖を持つ手が小さく震える。

「よく……帰ってきてくれた」

 つぶやき、徐々に近づく影を待ちわびた。

“ワッ!”

「よくやったぞ!」
「お疲れ様~」
「話聞かせてくれよ!」

 口々に迎える声。

「……」
「……」

 妻のパドメと目を合わせるセシエル。

「……」

 ベリルは馬から降り、空を見上げた。いつもの空。いつもの大気。

 そして、長老と目を合わせ静かに頷き合った。
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