王国ファンタジア【流浪の民】
◆遙かなる家郷-はるかなるかきょう-
「また、どこかで出会う事があるかもしれない。その時は、声くらいかけてくれ」

「そうだな。またお前と手合わせもよい」
「!」

 ドルメックは、ばつの悪そうに頭をかいた。

「君も、一度は俺たちの集落に来てみてよ。ベリルと長老さまのケンカ楽しいから」

「……セシエル」
「ケンカ?」

 セシエルはニコニコとしながら続ける。

「そ。長老さまとベリルの口げんかは面白いよ」

「面白いものか。疲れるだけだ」

 ベリルはげんなりした。

「そうだな。どんな処なのか、見てみたいよ」

 ドルメックの笑顔に、ベリルは小さく笑った。

 出会った時とは違うその表情を、彼の中の何かが変わったのだと気付かせる。

 荷造りを済ませ、還るべき場所に向かうセシエルとベリル。


 遙か西の辺境の地へ……長い道のり、空は晴れ白い輝きがちらりと視界をかすめた。
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